憧れについて

自分自身の身体を使って、表現することへの憧れが強すぎる。与えられた情景の中に自分を溶け込ませ、自分ではない自分を他者に見せる。自分ではない誰かの人生を経験することができる。それも一回だけではなく、何回も。

小学生の頃、フィギュアスケートに憧れて、何回も見ていた。滑りやすい新品の靴下は、フローリングのリンクでスケートシューズとなった。A 4のコピー用紙にうろ覚えの技名を書き並べ、自分だけのプログラムを作り、音にのせ、好きなだけ滑る。最後のポーズをすれば、拍手が聞こえる。

学校で音読をする時は、人一倍張り切っていた。先生に向かって、早く私を当てて。沢山読みたいの。私を当てて。と念を送る。ついにそれが届いた暁には、心の中でガッツポーズをする。お話の部分はまるでナレーターのように。鉤括弧の部分は感情をのせて、声色を変えて、まるで登場人物が乗り移ったかのように。

楽しくて仕方がなかった。